「聴く前に読む?聴いてから読む?……今年の発表会 フルートアンサンブル 極私的 曲目ガイド」

今年の発表会でフルートアンサンブルが演奏する作品は

伊藤康英/4本のフルートのための組曲「フルーツ パフェ」

伊藤先生は管弦楽作品からオペラまで幅広い作品を書いていらっしゃいますが、中でも交響詩「ぐるりよざ」は吹奏楽の世界的なレパートリーとして知られています。(今年の吹奏楽コンクールの課題曲も書いていらっしゃいます)

さてさて、今回演奏するフルーツ パフェ。
まず面白いのはそのタイトル。

果物のフルーツ(fruit)とフルートの複数形(flutes)をかけ合わせたもので、パフェとはフランス語で「完璧な」というもあるので直訳すれば「完璧なフルートたち」!?
ちなみに楽譜に書かれている邦題は組曲「フルーツパフェ」ですが、英題は「flutes pafait」です。

曲は4つの楽章に分かれていて

1.フルーツパフェ
2.マロンミロンガ
3.チョコレートダモーレ
4.ジェラートコンカフェ(今回はこの楽章は演奏しません。ちなみに!吹奏楽作品でやはり名曲を残している真島俊夫さんにも同名の曲があります)

…どれも美味しそうな名前。

1.フルーツパフェ

冒頭、アウフタクトで始まるソ#ラレファミミ♭レという動機を始めに16ビートとアフタービートを基本とした楽章。
このアウフタクトがなかなか難しくて2/4拍子でありながら冒頭に16分休符があり、それを間合い取りつつ、勇気?をもって演奏を開始するのが難しい!
この音を出さない休符を何回も練習。
休符を感じつつタイミングを合わせる緊張感が聴きどころ?です。
曲は冒頭のアウフタクトを用いた刺繍音型をパート間で受け継ぎつつ、シンコペーションによって支えられます。これは後半に少し短縮した形で同じ動機でもう一度再現されます。その再現に移行する部分は冒頭動機のソ#ラの2音と点描画のような半音階を4つのパートに受け渡しながら進むのですが、この部分は特にアンサンブル力が問われます。
フルートアンサンブルのチーム力は如何に?

曲の終結部には冒頭の動機を基にしたユニゾンのトゥッティでやや無調に近い音列があるのですが、練習の度に「#を落とした!、♭を落とした!うわぁ、指が回らない!タンギングが追いつかない?!」と皆さん騒いでいます。
指定のtempoは4分音符120のVivace。
疾走感のある楽章ですが、譜面から失踪しないように演奏します。

2.マロンミロンガ

マロンミロンガってどんなお菓子と思われますよね。またタピオカみたいになんか流行り始めたのかと……
いえいえマロンミロンガというお菓子はないのです。(作曲家が考えた架空のお菓子)
ミロンガは南米アルゼンチンのダンス音楽で、中間部に4/4拍子でありながら8ビートのきいた3+3+2のステップが出てきます。このあたりがどことなくピアソラを連想します。
曲の終結部はモノローグともいえるような1声部の低音のソロと暫しの沈黙の後、半音階の平行和声から7thコードで終止するあたりが何ともオシャレです。
(最後のモノローグが、フルートには出しにくい低音で出てくるので生徒さん達、苦労されています。スカスカ吹いては渋栗になってしまうよう……!)

3.チョコレートダモーレ

これも作曲家が考えた架空のお菓子。
ダモーレとはイタリア語で「愛」という意味。
オーボエダモーレやヴィオラダモーレなど甘美な音色の楽器の総称をさす意味もあります。

このチョコレートダモーレは元々はヴォーカリズの歌曲のために書かれたもので、後に作曲家によってピアノ連弾やピアノにも編曲されています。

テーマは変ホ長調の気品のある旋律が3/4拍子のスローステップのワルツによって歌われます。
主題の後、それに対をなす物憂げな旋律が変ト長調に転調して表れます。
後半は冒頭のテーマがテンポを早めたセレナーデ風の軽やかなワルツで変イ長調によって歌われます。
前半で対に表れた物憂げなメロディーはここでは変ハ長調で表れるのですが、
この代わる代わる出てくる転調や普段見慣れない♭の多さに譜読みを始めた頃は「ファのフラットって、え~と、え~と…ドのフラットってえ~と?」の練習の度に苦戦していました。
アーモレな甘い音色の空気感をホールに満たすことはできるのか……

フルートアンサンブルというのは同族アンサンブルにありがちな音色が近寄ってどれも同じに聴こえたり、変化がつけにくいことが多いのですが、この組曲は作曲家の職人肌なエクリチュールによって、テンションコードを多用したハーモニーやパート間の音の配置等がとても魅力的に書かれています。

だからこそやりがいのある曲なのですが……

1年近くをかけて音程や音色とは、フレーズとは……とコツコツ練習してきました。

特に架空のお菓子であるマロンミロンガやチョコレートダモーレは聴いてくださる皆さんがどんな味覚を想像して頂けるでしょう?

エスプレッソのようなホロ苦い味か…
風味のあるチョコレートの香りか…

それとも

ただただ甘ったるい砂糖菓子のような味か……

乞うご期待?!

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