歯は命

「歯は命」

この言葉を聞いて、頭の中に今から30年以上昔にTVコマーシャルで流れていた某俳優が出演していた美白歯磨き粉のことが思い浮かんだアナタ。

 

今回書くのはそのことではありません。

(この辺りナニを書いているんだ!と思われた方はスミマセンが歯は命でGoogle検索して下さい…)

 

今回も前回に続いて書籍にまつわるお話し。

 

先日、こんな本を読みました。

 

根本俊男「すべての管楽器奏者へ ある歯科医の提言」

 

著者の根本さんは横須賀で開業していた歯科医なのですが、ご自身でもアマチュアオーケストラのコントラバス奏者でもありました。

あることがきっかけで管楽器奏者の特殊歯科診療と研究を始め、その研究成果として今から40年近く前に今回と同じタイトルで著書が出版されたのですが、いつしか廃刊になってしまい時を経て今回改訂復刊になったのです。

 

吹奏楽でユーフォニアムも吹かれていた経験もある根本さんは、歯科医師としての立場から、いかに歯・口腔、気管、肺全体が所謂楽器と共に大きな楽器を形作るかを認識し、科学的に考究するようになったのです。

 

例えばこんな記述…

 

「楽器とは人体全部、特に腹部、胸部、気道、口腔、舌、歯、唇これが1つの要素。次にいわゆるインストゥルメント、これは音を作るための補助的手段として用いられるものです。」

 

このセオリーだけで読んでも管楽器を吹く人自身の身体の要素がいかに大事かということがわかります。

 

歯の咬み合わせや歯並びが楽器吹奏時の角度にいかに影響するか等、当時は根性論とか先生に言われた通りの吹き方が絶対!という時代にあって根本さんの著書は画期的な研究でした。

 

ここからは私論になるのですが、歯並びや咬み合わせの他、顎の形がフルートを吹く時のアンブシュアというものに関係すると思っています。

例えば、普段から上唇と下唇が水平に合っている人、上唇のほうがやや下唇よりも前に出ている人、下唇のほうがやや上唇よりも出ている人、と3つのタイプに分けられます。

フルートは頭部管の唄口とよばれる部分に息を管の外側と内側にそれぞれうまく吹くことが必要なのですが、ざっくりいうと息の方向を内側にすると低い音に、外側にすると高い音にというコントロールが必要になります。

そうすると唇が上下水平なほうのアンブシュアのほうが理想的なのですが、ならば上唇が下唇よりも前に出ていたり顎の関係で上唇より下唇が前に出ているタイプはフルートに向いていないのか?とそういうことではありません。

 

自分はどちらかというとやや上唇が下唇よりも前に出ているのでフルートを初めた頃は高音域が出しずらく、高音域を出そうと思うと唇のまわりが力んでしまいスカスカした音を出して、最初は苦労しました。

自分がレッスンに通うようになって、口は「へ」の字にしなさいと言われたりして、後になって顎の力を抜くことだとわかるのですが、最初はこの感覚がなかなか掴めないでいました。

 

根本さんの著書の中でもこのことに対するヒントになることが書かれています。

 

「安静に顎の下部を、拳を握り軽く叩きます。するとカチッと歯が接触する音が聴けます。つまりこれは、隙があったことを示します。これを安静空隙と言います。(中略)楽器吹奏時、歯は接触していません。それどころか安静空隙よりもむしろ大きく開いていたのです。

 

先ほど書いた、上唇が下唇よりも前に出てしまう人、下唇が上唇よりも前に出てしまう人も吹奏時歯を接触させないということでは、この下顎の脱力が必要になるのですが、この脱力というのは少し気をつけなければならない言葉です。

 

楽器を吹くのに力を抜きましょう!というのはよく聞く言葉なのですが、ほんとに全身脱力してしまうとへなへなと床に倒れこむことになってしまいます。

 

つまりどこか脱力するためにはどこかが支えていないといけません。

 

では、その「どこが支えているのか?」そして「本当に必要な脱力とは何か?」については、実際に音を出しながらでないと掴みにくい部分でもあります。

言葉だけで理解したつもりになってしまうのが一番もったいないところ。

 

加えて、こうした身体感覚は一度理解しても、演奏の中で状況によって変化します。長時間演奏するとき、緊張する本番の舞台では、いつもと同じ力の抜き方ができなくなることもあります。

ですから、日常の練習から顎や唇の微細な動きに意識を向けておくことが、自然なアンブシュアを維持する鍵になります。身体で覚えることこそ、音楽表現の自由を支える土台になるのです。

さらに、自分自身の身体の違いを理解し、それに合わせた工夫を積み重ねることで、演奏技術の幅も広がり、思い通りの音色を生み出す力が養われます。これは単なる理論だけでなく、日々の練習の中での小さな気づきの積み重ねがあってこそ得られる感覚です。

 

ですのでこの続きは、ぜひレッスンの場で一緒に体感していただければと思います。頭で考えるよりも、身体で気づくほうがずっと早いですよ!

 

引用/根本俊男「すべての管楽器奏者へ ある歯科医の提言」(音楽之友社)

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