先日偶々テレビを見ていたらNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組でフランス、パリオペラ座の日本人バレエダンサーを取材していた。
エトワールというバレエダンサーの中でもほんの一握りの人しかなれないトップダンサーになった現在でも、毎日バレエの基本動作を繰り返し練習する様子を映しだしていた。
そのダンサー曰く「目に見えない小さな違いの基礎の積み重ねの先に理想と自由がある」
その言葉を聞きながら自分もウンウン頷く。
まさしくこれは楽器も同じ。
- ···毎年来日するパリ管のフルート奏者、ヴァンサン·リュカ氏のマスタークラスを時間があれば聴講するようにしているのだが、受講生のレッスン内容の約8割くらいが基礎的内容に終始する。
そしてそのレッスンで我々フルート業界ではタファネルゴーベールと呼んでいるスケールやアルペジオの書かれた教本を受講曲に連動させて受講生に吹かせるのだが、お手本でリュカ氏が吹くと基礎練習がまるで1曲の音楽作品のように聴こえる。
受講生にもスケールや曲の一部分を丁寧に吹かせながら加えて身体のつかい方を少し変えるだけで受講生の音色が変わっていく様子を毎回目の当たりにする。
そしてリュカ氏が受講生に繰り返し言うのはカタコトの日本語で「ウタッテ、フイテ、ウタッテ、フイテ!」(歌って吹いて!)
と、ご自身でも艶のある声で歌ってみせ、吹いてみせ、その声量と音色の多彩さに圧倒される。つまりは歌えれば吹けるっていうこと。
バレエダンサーもリュカ氏も練習やレッスンを通して基礎をストイックにまで大事するのは、楽器だったらロングトーンやスケールをやることが基礎だという意味以上に、自分のちょっとした違和感に気づく力、フルートだったら音質やリズム、音程etc.などを是正していく力や整えていくために間違いに気づける感覚や耳を育てることにあるのだと思う。
時々自分のレッスンで生徒からどのくらい練習したら上手くなりますか?という質問をされるのだけど(これは一概にはこのくらいとは言えないのですが···)上達の色々な要因はあるとしても、上手くなる道筋を示してその通り練習していく中で、前述のようにそこに音色、リズム、音程等の良し悪しを聴きわける耳をその人がもてるかどうかでも大きく分かれる。
もう一つ、フィジカルな面からいうとフルートは自分の身体の右に構えるので他の管楽器と違い無理な体勢を取るのだが、そこにその人の元々持っている身体の癖が絡む。
レッスンでその癖を自分で認識してもらって直していきながら、その人各々に合う楽器を吹くための理想的なフォームに持っていくのですが、最初はその人にとってはそれが違和感として出てくるので、それを意識してもらいつつ繰り返し練習することで、それが身体にきちんと定着していけるかどうか、本人の認識力にも大きくかかってくる。
なので自分のレッスンでも事あるごとに基礎的なことに気をつけてシンプルにした課題を客観的に、かつ丁寧に練習をしてもらうのだが、量を吹けなくても質は断然変化する。
- ···とはいえ基礎はコツコツやらねばならないので人によっては骨が折れると思うのも確か····。
冒頭に書いたバレエダンサーは番組の中でこうも言っていた。
「我慢の先に自由がある」····
覚えておきたい言葉ですね。
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